メタボリックシンドロームって何だ? メタボリックシンドローム(英 metabolic syndrome、代謝症候群とも)とは、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態。WHO、アメリカ合衆国、日本では診断基準が異なるため注意を要する。以前よりシンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、マルチプルリスクファクター症候群、内臓脂肪症候群などと呼称されてきた病態を統合整理した概念である。 1.世界糖尿病連盟(IDF)基準: 腹囲男性90cm、女性80cm以上が必須。 かつ 血圧130/85mmHg以上、中性脂肪150mg/dL以上、HDLc男性40mg/dL,女性50mg/dL未満、血糖100mg/dL以上の4項目中2項目以上。
腹囲男性85cm、女性90cm以上が必須。 かつ 血圧130/85mmHg以上、中性脂肪150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満、血糖110mg/dL以上の3項目中2項目以上。
腹囲男性90cm、女性80cm以上、血圧130/85mmHg以上、中性脂肪150mg/dL以上、HDLc男性40mg/dL,女性50mg/dL未満、血糖100mg/dL以上 の5項目中3項目以上。
JASSO基準の腹囲を男性90cm、女性80cm以上に改変したもの。
改訂NCEP-ATPVの腹囲をCRP0.65mg/L以上に置換したもの。
日本肥満学会が提唱し、メタボリックシンドローム診断基準検討委員会が承認した診断基準(2005年)日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本糖尿病学会など7学会から選出された14人の委員で構成された「メタボリックシンドローム診断基準検討委員会」(14人の委員のうち8人は日本肥満学会の役員)が約1年間かけて検討・設定し、2005年4月8日に日本内科学会総会で発表した日本でのメタボリックシンドロームの暫定的な診断基準は以下の通り。 ※「暫定的」としているのは、女性の腹囲の基準を男性より下げるべきであるなど基準値を見直す意見が内科医学会、循環器科学会などから出ており、近年中に微修正される見通しである為(2006年7月現在)。
ただし、内臓脂肪面積は男女混合で決めて、そこから男女別に腹囲基準値を決めたのは論理的に誤りであり、その後の、内臓脂肪面積も腹囲も一貫して男女別に検討した複数の研究では、全く異なる数値が提唱されており、各方面から、日本肥満学会に対して、この基準を撤回する事が求められている。 上記に加え以下の3項目のうち2項目以上
(注意)動脈硬化の危険因子の診断基準には、当然入ってよさそうな血清LDLコレステロールやBMIが含まれていない事に注意する。またここでいう「高脂血症」はTGとHDLコレステロールで判断し、肥満は腹囲で判断している。尚、高血圧、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、喫煙、BMI30以上の肥満や糖尿病はメタボリックシンドロームで定義するまでもなく、動脈硬化の危険因子と考えられている。 IDF基準(2005年)内臓脂肪蓄積による腹部肥満が診断の必須項目であるという点で日本基準と同様だが、腹囲のカットオフ値が異なるほか、血糖値の上限がより厳しくなっている、脂質代謝異常の判断基準が2項目に分かれている、などの違いがある。日本の学会が決定した腹囲の基準値が国際学会から否定されるという異例の事態となっているが、現時点で解決の見通しは立っていない。 病態に対する概念世界ではインシュリン抵抗性を基礎とした病態と考えられているが、我が国では現在、「蓄積された内臓脂肪組織は様々なアディポサイトカイン(内分泌因子)を分泌し、その中のアディポネクチン、レプチン、TNF−α、ビスファチンなどの遺伝子発現レベルでの産生異常が代謝異常を引き起こし、動脈硬化などにつながる」とする大阪大学医学部チームの発表が、メタボリックシンドロームの概念として支持されている。ただし、この疾患の概念や診断基準については、日本国内でも、大阪大学グループの学説に異議を唱える動きも出てきており、また、WHO、IDFなどの機関ごと、あるいは国ごとに大きく異なる部分があり、症候群として捉える事自体に異議を唱える学者グループや学会も複数存在しているのが実情である。日本医師会は生涯教育シリーズ「メタボリックシンドローム」で、これが、心血管疾患のリスクを35.8倍にするような根拠の無いイラストレーションを掲載しているが、世界のこれまでの疫学データのメタアナリシスでは、心血管疾患のリスクは平均1.74倍と報告されている。また、日本では、14年間におよぶ久山町研究で、日本肥満学会の診断基準によるメタボリックシンドロームは、男性では心血管疾患の相対危険度が1.4で、これは有意なリスクにならない事が判明した。 |